先頃100巻を達成した豹頭の超戦士を巡るヒロイックファンタジー・グインサーガや異世界の邪神との戦いを描く魔界水滸伝などなど枚挙に暇がないほどの小説群、さらに中島梓名での評論など幅広く精力的な活動を続ける栗本薫氏。彼女は『ぼくらの時代』で江戸川乱歩賞を獲得し、颯爽とデビューを果たしたミステリの遺伝子を持つ者。そんな彼女が創造した名探偵が、伊集院大介。そんな探偵に魅せられた者たちが集う会がそう、伊集院大介保存委員会なのです。
最近仕事が忙しくて、ろくに本を読む時間も取れない。こんなときは心も荒み、人にもつっけんどんな態度をとってしまい、ああ、つまんないことをしたなあ、と後悔しきり。いつでも余裕を持って人と接することが出来たら。。。そんなときは優しい目をした探偵に会いに行こう。手に取った本は『伊集院大介の冒険』。短い話の中で繰り返される、彼の仕草、態度、行動、表情。そんな彼の姿を瞼に浮かべると、イライラしている心が解けていく。さあ、明日からは心機一転頑張ろう。
数多くの作品を送り出している栗本薫氏ですが、ミステリの分野でも多くの傑作と並び、名探偵、名キャラクターを生み出しています。デビュー作『ぼくらの時代』に続く三部作での探偵役、「ぼく」こと栗本薫(男の子です)と相棒・石森信、恐るべき美貌を持つ謎の役者・嵐夢之丞など魅力的な面々が数あれど、銀縁眼鏡にふわぁっとした笑顔の名探偵、伊集院大介が代表選手と言えるでしょう。
極楽とんぼそのものといった風貌は、なんとも頼りないのだが、するりと相手の懐に入り込んでしまう人懐っこさと物事の本質を見通す鋭い洞察力でひょうひょうと事件を解決していく。そして事件が解決しても威張らず誇らず、むしろ事件の裏に潜むどうしようもない悲しみと深い憎悪に心を痛め、理不尽な犯罪や人の心を踏みにじる振る舞いには怒りをあらわにする。まさに罪を憎んで人を憎まずを地でいく探偵です。
彼は「人間を知りたい、ひとりひとりが持つ、それぞれの物語を知りたい、だから彼らの内面や奥に触れることが出来る『名探偵』になりたいんだ」というような台詞を口にしたことがあります。これこそまさに、人間探求家・伊集院大介のスタイルであり、原点なのです。
そんな彼の活躍する作品は多いのですが、発表時期によって作風が変わっています(大介氏の人間的魅力は不変ですが)。短編集『伊集院大介の私生活』『伊集院大介の冒険』や教育実習生時代に起きた事件を描いた『優しい密室』、少年時代を描いた『早春の少年』等傑作揃いですが、そんななかから、これは特に!と思う作品を挙げてみましたので、どうかご覧じあれ。
- 『絃の聖域』
- 人間国宝の長唄家元・安東喜左衛門の邸内で一人の女弟子が殺された。内部の犯行としか思えない状況のなか、警察は解決の糸口は全く掴めない。二代にわたって妾を邸内に住まわせているこの旧家では、複雑怪奇な人間関係が織りなされ、夫婦・親子が互いを犯人と名指し合う近親憎悪が渦巻いていた・・・。そんな中で寄り添い生きる、二人の少年、由起夫と智。そして第二の事件が起こる・・・。そんな魑魅魍魎の跋扈する異様な世界に飄然と現れる、伊集院大介。芸に生きる者たちの業、血縁故の妄執、少年の残酷さとほろ苦さを存分に描ききった傑作!
- 『天狼星』
- ファッションモデル連続殺人事件が発生した。死体はバラバラに切り刻まれている上、何者かに食われた痕跡が・・・。そして「シリウス」と名乗る犯人から、死体の一部と挑戦状が警察に届く。12の星座にちなんだ12の殺人を予告し、そして最後の13人目の犠牲者に選ばれたのは、伊集院大介その人だった!生涯の宿敵、シリウスとの初対決!伊集院大介は自らに向けられた毒牙から無事切り抜け、混迷を深める事件を無事解決できるのか?
- 『仮面舞踏会』
- 渋谷ハチ公前で若い女性が殺されるという事件が起きた。殺された女性は、”チャットルーム3”のアイドル、HN「姫」。最初で最後のオフ会で来ていた彼女を何者かが殺害したのだ!だが「姫」は生きていた。「姫」の正体は男性。そう、ネットおかまで、本名「姫野裕」。殺されたのは彼の先輩「田中知世」だった。彼女は「姫」として殺されたのか、本人としてか、はたまた通り魔の犯行か?「姫」こと姫野祐の親友、滝沢稔が事件の謎説きに挑む。そして登場する名探偵、伊集院大介。彼はいかにして事件を解決へ導くのか?PCお世界に馴染んでいるそこのあなた、必読です。
さてどうです?こんな魅力的な探偵はそういません。伊集院大介のふんわりした笑顔に会いに行きましょう。





