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【倶楽部紹介】タイムリミットまで、あと・・・~ウールリッチ/アイリッシュ愛好会~

俺に残された時間は、あとわずか。最後の時間が近づく。手がかりは費えた。万策も尽きた。この絶体絶命の状況の中、時間だけは刻々と進んでいく。どうすればいいのだ・・・

スリルとサスペンスに満ちた物語を描かせたら右に出るもののないウールリッチ。彼の描く主人公と共に胸の鼓動を高鳴らせながら、ページをめくる手が止められない経験を持つ人も少なくないでしょう。最近になって評伝や作品集などが次々に発表され、再評価も進むウールリッチ。このサスペンスの雄のファンクラブ、ウールリッチ/アイリッシュ愛好会の紹介です。

師走ともなれば、先生ならずともそこら中であらゆる人が駆けずり回っている。年末商戦を控えて大わらわの店もあれば、何とか資金のやりくりをしようと奔走する零細企業の社長、はたまた忘年会の調整に店から店へと渡り歩く学生やサラリーマンもいるだろう。様々な事情を抱える人々が、それぞれの思いを抱き、目まぐるしく日常を過ごす。そんな日々を過ごしていると、ともすれば自分を見失いそうになりはしないか?そんなときは、あえて都会の孤独の中に身を置いてみよう。そう、ウールリッチの描く、本の中の都会に。

「サスペンスの詩人」人は彼をそう呼ぶ。コーネル・ウールリッチ。絶体絶命の状況に陥れられた主人公が、限られた時間の中で必死に苦境から脱しようともがき、奮闘する物語を得意とする作家である。

ストーリーの展開がまた素晴らしい。捕まえられそうで捕まえられない自分の無罪を明かす証拠、掴めそうで掴めない隠された真実などを丹念な筆致で描き、危機感をあおっていく。これがうまい。

また、彼の作品の魅力はサスペンスだけに留まらない。理不尽な状況に巻き込まれた主人公たちの孤独感、絶望感、焦燥感などが叙情性豊かな描写と巧みな心理描写で描かれ、「詩人」という冠も伊達ではない、と頷かされる。そして困難な状況に挫けそうになる心と葛藤しながら、必死に突破口を模索し続ける、そんな姿に我々もつい引きこまれてしまう。読者の心が主人公の心がシンクロして、一気に読ませるのだ。

そんな彼の作品の魅力が存分に堪能出来るのが、200作を超える短編の数々。紙幅の都合上、じっくりと紹介が出来ないのですが、珠玉の作品ばかり。長編でのじりじりとしたスリル感は影を潜めるが、切れ味鋭い落ちや一瞬のスリルが短いストーリーの中に凝縮され抜群の効果を挙げている。ヒッチコックも作品の一つ、『裏窓』を映画化しているのはみなさんご存じのことだろう。そんな短編のほとんどが現在創元推理文庫、早川ポケミス、晶文社で読めるというのは幸せである。

そんなウールリッチのおすすめ作品を倶楽部代表である早見裕司さんから3作品挙げてもらいました。

『幻の女』(早川ミステリ文庫)
夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気持ちは苦かった。。。喧嘩別れした妻の事を振り払うべく、スコットは偶然出会った女と一晩を共にした。しかし帰宅したスコットが目にしたのは、彼自身のネクタイで絞殺された妻の姿であった!しかもスコットは最有力容疑者として警察に逮捕されてしまう。死刑執行が近づく中、恋人のキャロルと親友のロンバートが無実の証明に乗り出した!手がかりを辿っても近づかぬ真相、深まる謎。「幻の女」は一体誰なのか?サスペンスと謎解きの見事な融合で、乱歩が激賞し、オールタイムベストでも必ず上位にランクインする不朽の名作。
『夜は千の目を持つ』(創元推理文庫)
ある夜、警察官のショーンは身投げしようとしていた娘ジーンを助ける。彼の父は謎の予言者に「死」の予言を告げられ、もはや生ける屍のようにそのときを待っているだけなのだという。告げられた死の期限はあと5日。彼ら父娘を助けるべく、ショーンと警察は必死の捜査に乗り出した!予言は真実なのか、それとも巧みに仕組まれた事件なのか?調査が進むにつれ破滅の予言が現実味を帯び、次第に高まりゆくサスペンスは随一。そして抗いがたい悲痛な運命の中でも強く生きようとする登場人物の姿には深い感動を呼びおこさずにはいられないだろう。
『暁の死線』(創元推理文庫)
大都会ニューヨークに魅せられたダンサー稼業の一人の娘ブリッキー。彼女の前に一人の風来坊が現れるが、偶然にもかつて故郷で隣に住んでいた男だった。彼の名はクィン。さらに驚くべきことに彼には殺人の嫌疑がかけているというのだ。ふたりは手を携えて、無実を証明するために奔走する。時間は故郷へ向かうバスが出発するまでの5時間しかない!ほとんど二人の登場人物で繰り広げられる物語だが、アイリッシュ得意のサスペンスに加え、ブリッキーの内面の葛藤、積み重ねられるエピソードなどがその詩情豊かな文体で紡がれ、読者が作品に引き込まれること請け合いです。

ウールリッチの描く主人公が泣き、笑い、怒り、歯を食いしばり、最後に苦難から開放されたとき、自分の心もまた開放されていることに気づく。さあ、明日からまた日常という名の困難に立ち向かうぞ!

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2005年12月13日 23:05に投稿されたエントリーのページです。

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